だから本当にプロフェッショナルな部分が全くなくて、
素人だからできる強さみたいなのはあるかもしれない
タナカホンヤ
words & photograph by Nariya Esaki
店を開くというと、場所をリサーチして、なんて話もよく聞くけれど、でもお客さんとして足を運ぶなら、そんなデータよりも何よりも、気になるのは、店主の想いじゃないだろうか?タナカホンヤにはそんな店主の想いが、いっぱいに詰め込まれているような気がする。
「もともと始まったときは自分の蔵書だけですね。今でもあんまり変わらないです。」
そう実は古本屋なのに、今でも買取をやっていないそうだ。にも関わらず、蔵書が結構な数あるのは、もともと本を読むよりも、好きな本を人にあげるのが好きで、買い集めるのが楽しくなって、気付けば結構な量になっていたそうだ。それは今も変わっていない。
「一応自分の中で、自分の好きなものを、売りたいっていうのが強いんです。」
買取をやれば、安くいっぱい手に入るのも分ってはいるものの、やはり好きなものを売るということを大切にしたいようだ。でも理由はそれだけじゃない。
「本をいっぱい通路に置いてある古本屋さんにはしたくなかったんですよね」
「何かレンタルギャラリーみたいなのも出来たらいいなっていうのがあって、あんまり本ばっかりだと面白くないし、やっぱり他にもいい古本屋さんはあるので、ちょっとやっぱり違う感じの方がいいなっていう、それで、棚とかもタイヤが付いてるやつを選んで、そのときによって、配置を自由に変えられるようにしてあります。」
わたしが取材に行ったときにも、以前足を運んだときはライブハウスのようだったのに、その場所は和服ギャラリーへと様変わりしていた。それでも本屋としての佇まいを壊すことなく成立しているのはなぜなんだろうか?
「ぼくの場合は、なんも考えてないんですよ。でもなんも考えてないからできることって結構強くて、やっぱりあれこれ考えてやると、なかなかやっぱり難しいというか、勢いがないと出来ない部分もあるじゃないですか、だからぼくの場合は、本当にそういう意味では勢いしかないし、何も考えてないから出来ている部分はあります。だから本当にプロフェッショナルな部分が全くなくて、素人だからできる強さみたいなのはあるかもしれないですね。本当に、本もそうですね、本屋さんでやってたらやってなかったかもしれない」
だからこそタナカホンヤには“好き”がたくさん詰まった空間が出来ているのかもしれない。覗けばあなたもひょっとしたら“好き”を見つけられるかもしれない。
(おわり)